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日本史を勉強し直したい大学生・社会人におすすめの本(Kindleでも読める)

『ビジネスパーソンのための教養大全』というムック本によれば、社会人になって得たい教養の1位が歴史、特に日本史だそうです。

学生時代は歴史科目が苦手だったけど、社会人になって勉強し直そうという人が多いそうです。

もういちど読む山川日本史

もういちど読む山川日本史

それが証拠に、刊行されてからしばらく経ちますが『もういちど読む山川日本史』という本が流行りました。

ただしこの本はかなり教科書を焼き直した感のある内容で、教科書で挫折した人には少々不向きです。

そこで大学で歴史学を学んだ僕が、これから日本史を学び直す為の本をチョイスして書評しました。

社会人になって勉強し直すという人と、これから大学で歴史学を学ぶという人が対象です。

また、歴史=暗記科目というイメージを払拭すべく、歴史学のプロセス(史料批判)も重視して選びました。

これらの本を読めば一通りの歴史の知識が付く上に、歴史マニアへの一歩を踏み出せるかもしれませんよ。

本の選定基準とおすすめ度

今回日本史を学び直すおすすめの本として4冊を選びました。

選んだ条件は以下の通りです。

  • 千円以下で買えるお手頃価格
  • Kindleでの配信もある
  • 日本の通史について書かれている

内容については歴史学の基本である史料批判という観点が押さえられているかもチェックしています。

「史料批判って何?」方は下の記事を読んでください。歴史学の何たるかを解説しております。

www.okigaru-migaru.net

今回紹介する本はいずれもおすすめなのですが、あえて★3つで評価すると、

  • 石黒拡親『2時間でおさらいできる日本史』(おすすめ度:★★☆)
  • 河合敦『読めばすっきり! よくわかる日本史』(おすすめ度:★☆☆)
  • 渡部昇一『決定版・日本史』(おすすめ度:★☆☆)
  • 山本博文『歴史をつかむ技法』(おすすめ度:★★★)

ってな感じです。何冊も読む時間が無いという人は『2時間でおさらいできる日本史』→『歴史をつかむ技法』という順で読むのが僕のおすすめです。

では各本の解説をしていきます。

石黒拡親『2時間でおさらいできる日本史』

2時間でおさらいできる日本史 (だいわ文庫)

2時間でおさらいできる日本史 (だいわ文庫)

2時間でおさらいできる日本史』という、タイトルからして読むのが簡単そうな本です。

著者の石黒拡親さんは教育学部の出身だそうで、歴史学の専門家ではないようですね。

著者は、教科書などの歴史に関する書物の多くが用語だらけで読んでもつまらないものだと感じたそうです。歴史嫌いの人はみんなそう言いますね。

枝葉末節なんて、もっと日本史に興味をもってから知ればいいのだから、まずは太い歴史の流れがわかる本があるべきじゃないか。

そう思っていたところに執筆依頼を受けて書かれたのが本著とのこと。つまり太い歴史の流れがわかる本です。

確かに1つ1つの用語を拾って覚えながら読むのは大変です。通史を頭に入れるのであれば最初はザックリで、興味を持ったところから深く掘り下げていけばいいんです。

歴史学の基本である史料批判についても、著者が理解されていることを内容から読み取れました。

この事件は長屋王の変とよばれ、平安初期に編纂された『続日本記』には、長屋王が「国家を傾けんと」していたから自殺させたと書かれている。まるで謀反人扱いだが、別の史料からは長屋王が無実だったことがうかがわれる。『続日本記』は正史ではあるが、藤原氏の権力下で編纂されたものだ。そのまま鵜呑みにしたら藤原氏の思うツボにはまってしまう。

史料を鵜呑みにしては、それを著した時の権力者の思うツボにはまってしまいます。これぞ史料批判の根本的な考え方です。著者はよく理解されていますね。

内容がシンプルなのは良いのですが、少し説明が足らない部分が見当たりました。でもこれは仕方がありませんね。量を書くよりも内容を削る方が作業としては大変ですから。1つ説明を省略したら意味が通じなくなる事柄はたくさんあります。

これに関しては複数の本を読むことでカバーできます。史料批判の考え方ですね。

他にも現代に通じる考え方やエピソードも補足しており、わかりやすい構成で書かれていました。

とりあえずこの1冊」という人に本著はとてもおすすめです。文庫サイズでコンパクトで安いですしね。Kindleなら今すぐ読めますよ。

河合敦『読めばすっきり! よくわかる日本史』

読めばすっきり!よくわかる日本史 旧石器時代から21世紀まで (角川SSC新書)

読めばすっきり!よくわかる日本史 旧石器時代から21世紀まで (角川SSC新書)

2冊目は『読めばすっきり! よくわかる日本史』です。

著者の河合敦さんは地歴を教える高校教師を経て、現在は早稲田大学の客員教授をされているらしいです。テレビにもよく出演される有名人ですね。

やはり教師というキャリアを経ているだけに、歴史教科書に関するお話が得意なようです。

そもそも教科書というのは、エライ学者先生が書いたもので、膨大な歴史用語の羅列になっていて、読んでいてもちっとも面白くありません。

そこで今回、読むだけで日本史の流れや複雑な内容がすっきりわかる本を書いてみました。

というのが本著のコンセプトのようです。

前述の『2時間でおさらいできる日本史』と比較すると、かなり歴史教科書を網羅しているという印象を感じました。ただ、教科書のように淡々とはしておらず、噛み砕いた論調で進んでいきます。

そして各時代の文化についても逃さずしっかり書かれているのが特徴です。

この手の書籍は政治一辺倒になりがちですが、当時の人々がどのような文化を発展させてきたかにも重きを置いているのは流石先生です。

あと、僕が重視する史料批判の観点で言いますと、

聖徳太子をスゴイ聖人として記したのは『日本書紀』ですが、同書がつくられたのは100年以上後の奈良時代のこと。どうやら、時の為政者が太子を聖人にする必要があったらしく、その業績はかなり捏造されているといいます。ちょっとガッカリしますが、それが史実らしいのです。

と、しっかりフォローしていますね。教科書に載っている歴史は「現時点でわかっていること」であり、研究次第で覆る可能性があることを示唆するのが歴史学者として大事です。

社会人になってもう一度学び直すという人に向けて書かれていますが、すっきり読めそうなのは学生時代に教科書をそれなりに読んでいた人だと思います。全く知識無しで読むには情報が多過ぎるかもしれません。

歴史を1から学び直したい社会人というよりは、受験生が最初のステップで読むのが良いかもしれませんね。

渡部昇一『決定版・日本史』

決定版・日本史 (扶桑社BOOKS)

決定版・日本史 (扶桑社BOOKS)

3冊目は『決定版・日本史』。著者の渡部昇一さんは2017年4月に逝去されまして、この本を読んでいる最中の訃報でした。

渡部さんは英語学者であり、歴史学の専門家ではありません。彼がアメリカで講師をしていた際、日本人の留学生や講師たちがあまりにも自国の歴史についてあまりに無知であったことを嘆き、

「海外に行く日本人は 、日本の歴史についてこれぐらいは知っておいてもらいたい」

という思いで日本史関連書籍を書き始めたそうです。

『2時間でおさらいできる日本史』と『読めばすっきり! よくわかる日本史』が割と中立的な立場から通史を書いているのに対し、本著は著者の史観による見解を交えながら展開されます。

特に神話の伝承が日本史研究から切り離せないことと、国体が断絶したことは無いが大きな変化はがあったという日本史観に注目して読んでみてください。

通史を知る最初の1冊としてはマニアックで難しいかもしれませんが、2〜3冊目で読むと新たな視点が加わっておもしろく感じるでしょう。

ただし、極めて保守的な考えで論じておりますので、いわゆる自虐史観(本著では「東京裁判史観」と呼ぶ)の人はアレルギー反応を示すかもしれませんね。

思想はどうあれ一度読むことをおすすめします。とてもおもしろい切り口で歴史を見ている方なので。

山本博文『歴史をつかむ技法』

歴史をつかむ技法 (新潮新書)

歴史をつかむ技法 (新潮新書)

今回紹介している書籍の中でも最も読んでほしいのが『歴史をつかむ技法』です。

著者の山本博文さんは歴史学者で、中世〜近世の日本史を専門とされている方です。

まずは歴史学とはどういった学問であるかということが素人にもわかりやすいように書かれています。

その後に各時代の歴史のつかみ方を解説しながら通史をおさらいしていきます。特に歴史用語の解釈に重点を置いており、目からウロコが落ちるでしょう。

その一例として、鎌倉幕府の成立が1192年から1185年に変わった問題について取り上げられています。どうして教科書の内容がこれだけ大きく変化するのかは、この本を読めばすぐ理解できますよ。

そうやって歴史を学ぶ上でぶつかる不可解な点や誤解を解きながら話は展開していきます。中学・高校の歴史科目ではイマイチわからなかった内容も、この本を読めば理解し直すことができるかもしれません。

内容的には、大学で歴史を専攻する学生が学ぶ「史学概論 」といった科目に重なる話もまじえましたが、これは、歴史学とはどういう学問かを知ることが、現代社会に生きる皆さんの歴史的思考力を培う一助となり、歴史をつかむ入口ともなるはずだと考えているからです。そして、それはさらに教養と呼ぶべきものに結びついてゆくはずです。

特にこの歴史的思考力というのが歴史科目を学ぶ理由と言っていいでしょう。「受験以外で歴史を学ぶ意味なんてあんの?」って問われたら「歴史的思考力を培う為」と言うのが最適解だと思いました。

1つ惜しいところを言えば近現代史の内容がとても薄いこと。逆に言えば近現代史が顕著に取り上げられる昨今で古代・中世に紙幅を割いているのは好感が持てます。僕は古代史の人間ですからね。

これから歴史学を学ぼうと思っている大学生や、社会人になってから教養としての歴史学を知りたいという方には強くおすすめします!

番外編(少し難しい本や歴史小説)

せっかくなので歴史をテーマにした名著をご紹介しましょう。

これらは最初の1冊として読むには難しい本だったり、史実とフィクションが入り混じった歴史小説です。

ある程度知識が無いと読みづらかったり誤解をしたりするので、上の4冊を読んだ上で手に取っていただけると理解がし易いかと思います。

番外編として紹介するのは以下の5冊です。

  • 小田中直樹『歴史学ってなんだ?』
  • 網野善彦『日本の歴史をよみなおす』
  • 司馬遼太郎『坂の上の雲』
  • 井沢元彦『逆説の日本史』シリーズ
  • 中公文庫『日本の歴史』シリーズ

小田中直樹『歴史学ってなんだ?』

歴史学ってなんだ? (PHP新書)

歴史学ってなんだ? (PHP新書)

僕が大学の入門ゼミで最初に課せられた課題が『歴史学ってなんだ?』の要約でした。

当時は読んでいて「『歴史学ってなんだ?』ってなんだ?」みたいな感想を抱いたものです。今読み直してもかなり難解です^^;

内容としては「歴史学とはどういう学問か」「歴史学は役に立つのか」という命題を、あらゆる事例をもって考察していきます。

これから歴史学を専門的に学ぼうと思う方は第1章の「史実を明らかにできるか」を重点的に読んでみてください。

読み終わる頃には「歴史学や史実と一口に言っても、いろんな考え方があるんだな……」と、眉間に皺を寄せながら思っていることでしょうw

わからないところは飛ばしながら読んでも大丈夫ですが、史料批判を取り扱ったパートについてはよく読んでください。

歴史学の基本は複数の史料を批判しながら史実を導き出すことです。これを理解しておかないと研究はできませんよ。

ちなみに著者の小田中直樹さんは経済学を専門とされている方です。こうして見ると歴史関係の入門書は専門が歴史以外の人が多いことに気付かされますね。

網野善彦『日本の歴史をよみなおす』

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

おそらく日本で最も有名な歴史学者といえば網野善彦と、その道に通じる人なら異口同音に言うでしょう。

網野さんの考え方は網野史学として有名です。ただ、どうしてそこまで有名なのかは僕もピンときません。

山本博文さんは『歴史をつかむ技法』は以下のように仰っています。

網野さんは、日本の社会がきわめて早熟に文明の世界に入り込んでいったために、逆にこの時代には王朝文化と並行して「未開の野生」がいきいきとした生命力をもって列島の各地で躍動しつづけていた、としています。(中略)

おそらく網野さんの議論で一番魅力的だったのは、こうした考え方だったと思います。人々がまだ定住を完結しておらず、後の江戸時代のように人がさまざまな制度や集団にがんじがらめにされていない社会、そうしたユートピアを描いた網野さんの歴史像に、いつも何かに束縛されて生きていると感じる現代の人々が共感したのではないでしょうか。

それだけ画期的だったということでしょうか。ちなみに映画『もののけ姫』をつくる際に宮崎駿監督は網野さんの研究を参考にされたそうです。

そんな網野さんの著書『日本の歴史をよみなおす』では民衆にまつわる様々なエピソードがされています。

なかでも、中世・近世では農民を意味する百姓(ひゃくしょう)は存在せず、存在していたのは農民を含む様々な職の人々である百姓(ひゃくせい)だったという説は学生時代によく聞きました。

それについても解説されておりまして、歴史教科書のミスリードで百姓=農民となった経緯や、農民以外の百姓が存在していた史料分析など、歴史学のおもしろさが伝わる内容となっております。

ただし、かなり研究の過程にウェイトが置かれていますので、歴史知識や歴史学にノータッチだと読むのが大変かもしれません。

司馬遼太郎『坂の上の雲』

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

歴史小説好きなら司馬遼太郎を知らない人はいませんよね。彼が書いた作品を読んで歴史学に目覚めるという人も少なくないでしょう。

でも彼は小説家であり、書いているのは歴史書でも専門書でもなく物語です。しばしば司馬作品に書かれた内容を史実だと勘違いされる方もいらっしゃいますが、彼の想像、すなわちフィクションも混じっています。

彼は史料をよく読み込んだ上で物語に落とし込んでいるので、極めて史実に基づいた物語を書いています。それがかえってフィクションとの混同を招いているようです。

そのフィクションは司馬遼太郎自身の歴史観によって書かれたものであり、その考えは司馬史観と称されて歴史学における議論や批判の対象にもなります。

数ある名作の中でも『坂の上の雲』は「事実に100%近く拘束された」と自身の作品を評価しており、極めて史実通りの歴史叙述と言っていいでしょう。

当作品は明治時代の男たちが命懸けで日露戦争に勝利したというストーリーです。そういう物語であるがゆえに自虐史観の人々から非難の対象にされたという経緯もあったそうです。

でもそういう難しいことは置いといて、まずは物語から歴史学の門を叩くのも悪くはないでしょう。その1冊におすすめします。

井沢元彦『逆説の日本史』シリーズ

逆説の日本史〈1〉古代黎明編―封印された「倭」の謎 (小学館文庫)

逆説の日本史〈1〉古代黎明編―封印された「倭」の謎 (小学館文庫)

井沢元彦さんの『逆説の日本史』シリーズはとても人気です。

最近は司馬史観に並んで井沢史観という言葉があるぐらいです。以下に書いている件で批判も多いですけどね。

このシリーズの特徴は、時代を問わず同じ著者の見解が一貫して展開されることです。ざっくりした通史なら普通ですが、各巻これ程のボリュームで書いている人は少ないでしょう。

その内容も他の歴史関連書籍では論じられていないような考えが展開されており、教科書をただ暗記していた人が読んだら「そんな考え方もあるのか!」と感じることでしょう。

ただし、著者の想像の域を脱していない説も多々あり、書いてあることをそのまま事実であると飲み込んでしまうのは危険です。

あくまで井沢さんが推理して考えた歴史観であって、その推理が客観的に認められるには歴史学のプロセス、すなわち史料による実証が必要です。

逆に言えば、史料での検討が難しい内容でも自由な発想で論じられているので、読めば新たな視点で歴史を見ることができるかもしれません。

中公文庫『日本の歴史』シリーズ

日本の歴史〈5〉王朝の貴族 (中公文庫)

日本の歴史〈5〉王朝の貴族 (中公文庫)

より詳細な通史を勉強したいと思う方には中公文庫の『日本の歴史』シリーズがおすすめです。

刊行からかなりの年月が経っていますので最新の研究成果が反映されていたのが玉に瑕ではありますが、かなり詳細に数々のエピソードが取り上げられています。

時代毎に全26巻あり、各時代の代表的学者らが1巻ずつ担当しています。内容はかなり濃い上に1巻で1,000円以上しちゃうので、全巻読破はかなり大変かと思います。

だから専門とする時代を優先的に読むのをおすすめします。僕は土田直鎮さんが書いた第5巻『王朝の貴族』を最初に読みました。

僕が大学時代の先生の推薦で読みました。ゼミに入る時に日本古代史研究の基礎を身に着ける為に読んでおくよう指示されたのです。

また、大学の受験案内で高校生に向けた推薦図書を紹介する欄があり、そこでも以下のように取り上げられていました。

刊行後かなりの年数を経ましたが、未だにこれ以上に多くのエピソードを含み込んだ読みやすい著作はありません。平安時代の貴族社会に対するイメージを一変させること請け合いの名著です。

Amazonを見ても評価が高いので相当な傑作なんでしょうね。著者の土田直鎮さんが「僕の先生の先生」ということも後に知り、少し下駄を履かせていたのかとも思ってましたがw

『歴史をつかむ技法』が1番オススメ!

歴史関係の書籍は数多にありますので、「いざ勉強を始めよう!」って人はどの本から始めればいいのか迷うことでしょう。そんな人たちの指針になれば幸いです。

実を言うと僕は歴史学を専攻してはいたものの、学科の中ではかなり知識が弱い方でした。そんな僕が「わかりやすい!」「目からウロコが落ちた!」と思えた本ばかりなので、是非とも変な先入観を持たずに手にとっていただきたいです。

大学生や社会人の方々に「この1冊だけ!」というのを選ぶのならば、山本博文さんの『歴史をつかむ技法』がベストです。何冊も紹介してきましたが、全部この1冊の為の噛ませ犬と言っても仕方がないレベルの良著だと思っています。

Kindleでも読めますので、買って、どうぞ。

歴史をつかむ技法 (新潮新書)

歴史をつかむ技法 (新潮新書)